
上芝 英司
ueshiba eiji
「遊び心とアイデアで人を巻き込み、言葉と思考で道を照らす人」
1979年大阪府豊中市生まれ、喫茶ピーコック店主。
喫茶の傍ら、文章を書いたり相談に乗ったりカブに乗ったりしています。
- 喫茶ピーコック
- うえしば相談室
ごあいさつ
greeting
大阪の中心からマルーン色の電車に乗って北へ約15分。
今どき上下ホームを構内で行き来できず、当たり前のようにホームを大きな楠木が貫き、たびたびニュースに登場する開かずの踏切が鎮座する駅が僕のまちだ。
1964年、東京オリンピックの年にオープンした「喫茶ピーコック」は僕で3代目。
なんの変哲もない「まちの喫茶店」を家業として、かれこれ60年も営んでいる。
こどもの頃、夏になると冷蔵庫のドアポケットにはキンキンに冷えたアイスコーヒーが麦茶ポットに入っていた。
そして、素麺のつゆは「カリタ」のコーヒーサーバーで程よい濃さに割られて準備されていた。
コーヒー屋とはそういうもので、お茶屋や蕎麦屋のドアポケットがどうなっていたのか僕は知らない。
小さなまちの駅前には、たいがい「交番」がある。
地元の人が毎日のように利用する駅だからこその立地だし、駆け込みやすかったりするのだろう。
そして、何かが起これば駅前から出動する。
ところが僕のまちの交番は駅から15分くらい歩いたところにあって、ほとんどいつも留守にしている。
机の上に置いてある電話で呼び寄せるスタイルだ。
そして、本来なら交番があるであろう場所に喫茶ピーコックはある。
だからと言って交番の代わりをしようなんて思ってもないけど、喫茶店の特性か立地が故なのか、日々いろんな人が駆け込んできたり、逆に駅前から出動したりしている。
近所の人が立ち寄り、話し込んだり憩ったりしているのを見ていると、最近は「お寺ぽいな」と思うようにもなってきた。
立ち寄る人の話を聞き、お茶を出して、まちを見渡す。
平穏に過ぎる日々を綴る。
多くの人の「当たり前」は偏見や偏愛でできているわけだけど、この広すぎる世界に自分だけの世界を作ってみる。
その偏りこそが人であり、冷蔵庫のドアポケットなのだと思う。