「あのさ、君が頑張って働いてたら俺らサボってるみたいに見えるからやめてくれへん?」
忘れもしない。
20歳の時に2週間だけバイトした、江坂の串カツ屋。
名前も場所も覚えてるし今も営業されてるお店なんだけど、そこは大人なので伏せておく。
店主の言葉じゃないしね。
15歳からブルーハーツばっかりをギターで弾き倒していたパンク少年にとって、その言葉はすごく衝撃だった。
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未来は僕等の手の中。
借り物の時間の中で本物の夢を見るんだ。
生きるということに命をかけていたい。
情熱の真赤な薔薇を胸に咲かせよう。
ドブネズミみたいに美しくなりたい。
こんなふうに生きていきたいと思って社会に出て、あれこれやるんだけど全然うまくいかなくって。
でもやっぱり「あんな人」にだけはなりたくない。
東中島の交差点のファミマの前で「世界の真ん中」を歌いながら泣いた。
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高校の時に働いていた喫茶店も、その後の回転寿司屋も、ドミノピザも、ライブハウスも、長く働いたバイト先はみんな同世代で、訳もわからず今をもがき苦しんでた。
当時のバンドメンバーもそう。
みんな一生懸命だった。
一生懸命がバレるの恥ずかしいから、酔っぱらってふざけたり変にカッコつけたりしたけど、みんながみんな気づいてた。
だって、自分がそうなんだから。
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僕がこんな年になってもまだ何も決めきれず、ブルーハーツを聞きながらこの原稿を書いているのも、「一生懸命を笑え」なんて言って変にカッコつけてるのも。
まだまだ全然、あの時の悔しさが終わってないからです。
狭くて暗い厨房の奥で、タバコ吸いながら椅子に座って。
ヤニで汚れた戸棚のガラスを洗っている僕の背中に向けて放った一言。
死ぬまで忘れないと思う。
そんで絶対、あんな人にはなりたくない。
だから僕は歌うんだよ、精一杯でかい声で。