ポケットには企画書を


 

地元や地域で活動していると、友達や知り合いからイベントや交流会みたいなものに誘われたりする。

 

わりとああいう場は好きなほうで、いろんな人たちと話せたり、ひさびさの人に会ったり、何か新しいことが始まったり。

 

あまりにも毛並みの違う場所には行かないけれど、店が終わってからふらっと出かけるのが好きだ。

 

 

ただ、あの、「名刺交換」だけはどうも苦手で、イベント終了後に著者や登壇者への参列を見るたびに心が折れてしまう。

 

交流会みたいなものだとそれがフロアで各々行われていて、規模にもよるけど、名刺の束を手裏剣のごとくまき散らしていくタイプの人も見かける。

 

目が合ったとたん、「あ、ご挨拶だけでも!」といって胸ポケットから名刺を取り出し、慣れた手つきでにんにんにん。

 

ただ受け取るだけでは失礼なので僕もにんにんするんだけど、そこから何かに発展したり、会話が弾むことはほぼ無いと言っていい。

 

僕の名刺はわりと「突っ込みどころ」を仕込んであるタイプなんだけど、そこには触れてくれず、お相手の名刺は社名と名前と肩書きだけとか。

 

「いや、ほんまに挨拶だけなんかーい!」と心の中で叫んでしまうけど、本当に挨拶だけ、なのだ。

 

 

そんな辻斬り(と僕は呼んでいる)に遭わないためにも、僕は積極的に移動せず、壁にもたれたり椅子に座ったりして奇襲に備えている。

 

何かをきっかけに(たとえばビュッフェでから揚げを譲ったとか)少し会話をして、相手に興味がわいてからの「名刺交換」でいいじゃないかと思う。

 

 

「逢いたいと思うことが何よりも大切だよ」と、カールスモーキー石井も言っていた。

 

 

積極的に人脈を作ろうと名刺を持って突撃するのは苦手だけど、でもこれが「企画書」となると話は別。

 

自分が作ろうとしている物事に必要な人や関わってほしい人であれば、初対面だろうが強面だろうが総理大臣だろうが僕は突撃できる。

 

その昔は梅田の歩道橋や地下のライブハウスに企画書と名刺を持って乗り込んでいったけど、あのメンタリティは今も健在だ。

 

友達や知り合いを増やしたい、人脈を作りたい、レア名刺をゲットする、フォロワー数を競うみたいなことには燃えないけれど、面白い人たちと面白いことを仕掛けたい、アイデアを形にしたいっていう気持ちが強いからだろう。

 

 

互いの損得や権威性で繋がったところで何も起こらない。

データがひとつ増えるだけ。

 

 

相手に面白がってもらおうと思えば、自分が面白いと思っていることを伝えなきゃいけないし、伝えるためのツールがいる。

 

それが僕の場合は、企画書だったり名刺だったりする。

名刺といっても「グッズ」に近いようなものだけど。

 

夢を語ろう、アイデアを形にしよう。

 

胸ポケットには所属や役職や肩書を羅列したカードではなく、自分の夢の企画書を。

 

 

「夢を見てよ どんな時でも 全てはそこから始まるはずさ」と、カールスモーキー石井も言っていたじゃないか。